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「結婚の条件」~0.4%の高収入男をめぐる、独身女性の戦い

まずは、野村総合研究所の調査から算出した未婚男性の年収分布図を見ていただきたい。20~49歳までの未婚者のうち、年収400万円未満の男性は83.9%。女性たちが理想とする500万~700万円の層でもやっと4.9%。うち30代はわずか2%である。高年収男性がさっさと結婚しているという現実以前に、若い男性の年収が、一人の稼ぎで中流家庭を支えられないほど下がっているのだ。
 にもかかわらず、婚活は「独身女性によるわずかな高年収男性の争奪戦」という局面を迎えている。『「婚活」現象の社会学』(山田昌弘編著)という本にも書いたが、今、私と中央大学・山田昌弘教授が提唱した「婚活」とはほぼ逆の現象が起きている。私たちが提唱したのは結婚に対して次の2点の意識変換であった。

(1) 自分から動かないと結婚するのは難しい時代である。
(2) 夫が主に家計を受け持つ「昭和結婚」ではなく、夫婦合算年収の「男女共同参画型夫婦」を目指さないと結婚は難しい。

 結果として、(1)の意識変換は起こり、特に女性たちが積極的に婚活に取り組んだ。しかし、(2)の意識変換は起こらず、金融危機後の不況による就職活動への絶望とも相まって、若い世代ほど「専業主婦願望」が高まる結果となっている。

 しかし、それを受け入れてくれる男性は少ない。先輩夫婦を見て、「妻の働きが家計のレベルを決める」と悟った男性たちは「結婚後も共働きをしてほしい」とはっきりと希望するようになった。
 つまり、どんなにハウツーを駆使しても、「婚活の限界」はすでに見えている。養ってほしいという女性の数に対し、養える、養う気のある男性の数が圧倒的に不足しているのだ。結婚が増えるには、女性たち自身が「働く覚悟」と「働ける環境」を手にいれるしかないのだ。

 何にせよ、希少な年収1000万円以上の独身男性たちは引く手あまたの選び放題。しかし逆に、「モテるがゆえに結婚が遠のく」という状況があるのだ。
 某結婚相談所の経営者に会ったとき「最近、年収1000万円以上の男性との結婚ってありますか?」と聞くと「ないですねえ……」。相談所にはかなりハイスペックな男子がそろっていたはずだが……。
「婚活ブームで、若くてきれいな女性たちから次々に申し込まれる。感覚がおかしくなって決められないんですよ」
 50代男性は30代前半まで、40代男性なら20代女性を希望、しかもモデル並みの容姿は当たり前……と、どんどんハードルがあがっているのだ。
 しかし、彼らは「スペックモテ男」さんであっても「リアルモテ男」さんではない。結婚情報サービスに集うのは、「恋愛力」にはちょっと欠ける人が多いのだ。お見合いの申し込みはたくさん来るが必ずしもうまくいくわけではない。
「条件がいいから会ってみたんですけど……初老でした」とふられてしまうこともある。結局、決めきれず、いつまでもお見合いを繰り返すだけだ。

 結婚相談所の男性たちですらそんな状況なのなら、ヒルズなどに集う若い高収入の独身男性はどうなのだろうか?
「昨年だけでメアドをゲットした女性の数は300人以上です」
 というのはウチヤマさん(仮名、36歳、IT企業経営、年収1200万円)。起業家仲間の合コンやパーティは週2、3回。仲間の住む六本木ヒルズやミッドタウンなどで行われる。集まるのは20~35歳のタレントやモデル、女子アナ、OLから女子大生まで。いずれも「容姿に自信がある」女性ばかりだ。しかし、誰に会ってもピンとこないという。
「女の子がユニクロ化している。みんなほどほどに可愛いしおしゃれだけど、全員同じに見える。僕らは彼女たちのことを、『出回り物件』と呼んでいるんです」

 28歳以上は「婚活でガツガツしていて怖くて近づけない」そうだ。同世代の社長の会があるが「150人いて、独身は片手で数えるほど」。ほとんど既婚者なのに、「独身社長が100人いると勘違いしている女性が多い」と言う。現にウチヤマさんも今年司法試験に受かって働き始めた10歳下の彼女がいる。
「彼女が学生の頃に知り合った。人目を引くほどの容姿じゃないんですが、頭がよくて尊敬できる。結婚しようと思ってますが、彼女が就職したばかりなので、30代になってからと言われてます」

 妻にしたいと思ったきっかけは、一緒に歩いていたときのこと。重たそうな荷物を持った初老の女性が階段を下りていた。彼女はさっと走っていて「お手伝いしましょうか?」と声をかけ、荷物を持つのを手伝った。そこにぐっときた。
 物をねだらず、男に奢ってもらうことばかり考えないところもいい。就職して初の給料が出たとき、高級フレンチで10万円以上も奢ってくれたという。
 しかし、合コンには誘われたら行く。彼女も「浮気しても戻ってくるならいいよ」と言うし、イケメン独身の彼は「合コンの撒き餌」として重宝されているのだ。これもビジネスの付き合いの一つ。

「男が大成するには、できた嫁が必要」というのはウチヤマさんの社長仲間、イシダさん(仮名、38歳)。18歳で起業、25歳でお金持ちになったが一度会社を潰し、また東京で起業している。
「派手な女の子と結婚してダメになった社長をたくさん知っています。いいワインが飲みたい、時計を買ってくれ、家がほしい……どんどんエスカレートして、何億あっても財産を食いつぶされます」
 今は彼女がいないイシダさんだが、結婚は真剣に意識しているという。
「でも、奢ってあげて『ありがとう』のメールがない女性はその時点でNG。ブランドバッグを持ってるだけで嫌です」
 家計費を渡したらパーッと使ってしまうような人では困る。会社が傾いたときさっと「へそくり」を出してくれるぐらいがいい。たとえ年収100万円でも貯金する姿勢のある人がいい。それなのに、合コンやパーティに来るのは「基本は男に寄りかかりたい」という女性ばかり。
「男が金持ちになるんじゃなくて、女が男を金持ちにするんだよ。30代女性が社長をつかまえる可能性はかなり低い。合コンに来るより、若い社長の卵を見つけて磨いて真の男にするほうがいいよ」
 今のいい暮らしじゃなくて、10年後を見られる女性が本当のセレブ妻になれるというのがイシダさんの持論。自分もさんざん痛い思いをして得た教訓だ。

「僕は年収350万円のときに結婚しましたよ。起業したばかりで借金もあったし、妻のほうがずっと稼いでいました」
 と言うのは別の会社社長ハヤシさん(39歳、年収1200万円)。結婚したのは33歳のとき。会社が成功するまでは結婚しないと思っていたが、彼女のお父さんが入院し、挨拶に行った直後に亡くなったことがきっかけとなった。
 妻は今、子育て中だが、自宅でフリーの仕事をしている自立した女性。「成功しないと結婚できない」と思っていたのは、ただの言い訳だったとわかった。
「家族がいることで頑張る原動力になる。彼女はキャパの広い女性。やりたいことがある男は孫悟空でいいんですよ。お釈迦様の手の平の上で好きにやる」

 婚活ブームで、年収600万~1000万円台くらいの未婚男性に「モテバブル」が来ている。多くの女性たちが数少ない彼らを狙って争いを繰り広げるのが現代の婚活市場。しかしそれゆえに、男性も妻を選びきれず、逆に結婚しにくくなっている。そして彼らが独身でいることで、期待して未婚のまま引きずられる女性がいる。それこそが婚活ブームの新たな犠牲者なのかもしれない。
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