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「シングルマザーの貧困解決」ひとつの道筋

 ひとりで子育てをしながら家計も支える。シングルマザーの経済的な困窮が話題になっている。

【詳細画像または表】

 NHKが報道したネットカフェで生活する母子の話。また、『ひとり親家庭』(赤石千衣子著、岩波新書)、『シングルマザーの貧困』(水無田気流著、光文社新書)、『最貧困シングルマザー』(鈴木大介著、朝日文庫)など、一般向けの書籍でその困難が伝えられている。シングルマザー家庭を貧困に陥れる背景には、日本社会の持つさまざまな問題があることを、今では多くの人が知っている。

■ よくあるパソコン教室では不十分

そういう中、ひとつの処方箋になりそうな事業がある。岩手県のひとり親支援NPO「インクルいわて」が手掛けた再就職支援事業「インクルーム」だ。専門用語では「中間的就労支援モデル」とか「包括的就労支援事業」と呼ばれるやり方で、もともと主婦だったり、外で働いていなかったなどのシングルマザーを精神的に支援し、職業訓練を施して再就職に至る道筋を包括的に支援する。 主婦向けの再就職支援講座やシングルマザー向けの職業訓練は、すでに星の数ほどある。「要するに、パソコン教室でしょう?  何が新しいの?」と思う人もいるだろう。確かにパソコンの使い方も教えるが、それは「インクルーム」の機能の一部でしかない。

 全体の仕組みを説明しよう。インクルいわては、平成24年10月~平成25年3月までの6カ月間、シングルマザーの「中間的就労」の場として、就業支援室「インクルーム」を開設した。「研修生」となった6人のシングルマザーは半年間、可能な頻度と時間「出勤」する。「週3回、3時間ずつ」など、心身の状態や家族の事情に応じて選べるようにした。

 研修生であるシングルマザーは、インクルいわてに送られてきた支援物資の仕分けや、エクセルでの在庫リスト表作成といった、事務仕事を手掛けた。

 研修生は全員、パソコンに触るのは初めて。それでも、電源の入れ方から習い始めて、半年後にはパワーポイントによるプレゼンテーション資料作成や、デジタルカメラで撮影した写真を画像加工ソフトで加工して、お礼状のカードを作ることまでできるようになった。

これらの作業は、実際にインクルいわての運営に必要とされるもので、実務経験として身に付く。テキストに沿ってパソコン操作を習うのに比べると、実践的である。

■ 報酬を払い、履歴書に書ける職歴に! 

 また、パソコンスキルの中には生活支援を入れて、家計管理のための家計簿付けも習得してもらった。収入が少ないから、面倒だから家計簿はつけないのではなく、少ないからこそ、面倒でないその人にあった方法でおカネの使い方を体得することが、本当の生活再建につながる。

 最大の「発明」は、この研修に報酬を払い「仕事」にしたことだ。おカネをもらうことでシングルマザーの自己肯定感を醸成できた上、履歴書の空白を埋めることができ、再就職面接でも有利になった。「研修を有償にしたらよいのでは」と提案したのは、インクルームでスタッフとして働いていた、深川紗絵子さん。

 深川さんは、簿記講師の経験があり、これがシングルマザー支援に活かされた。「簿記を習う受講生の中には、資格を取って再就職をしたい、と希望する主婦の方が多くいらっしゃいました。ただ、仕事から離れる期間が長くなると、優秀な方でも、なかなか就職に結びつかないのです。企業が中途採用で重視するのは、資格より直近の実務経験なので……」。

 そこで思いついたのが「インクルームでの研修に時給をきちんと払って“仕事”にしてもらったら、就職面接でアピールできるのでは」というもの。実際、研修生たちが就職面接を受けた時は「インクルいわてって、どんな会社ですか」とか「どんな仕事をしていましたか」と尋ねられたそうだ。

 インクルームでは、深川さんが簿記を、もうひとりの女性がパソコンを教えた。「わからないことがあったら、何度でも聞いてください」がモットー。安心して尋ねられる優しい雰囲気は、誰にでも持てるものではない。インクルいわて理事長の山屋理恵さんも「インクルームは深川さんの能力と頑張りで、うまくいったと思います」と評価する。

■ 敷居が高いハロワにはみんなで行く

 実際、細かいところに工夫が行き届いている。たとえば「みんなでハロワに行く」取り組み。インクルームに通い、スキルが身に付いてきても「ひとりでハローワークに行くのは不安」という研修生がいた。

 そこで深川さんは、ハローワークの担当者に事前連絡を入れた上で、スタッフと研修生全員でハローワークを訪問、その場で求職登録や個別面談をしてもらった。その結果、まもなく1人の研修生の就職が決まったという。その後さらに2人が就職、3人が社会参加できるまでになった。新卒でも中途でも、就職活動は不安がつきもの。「気持ち」に寄り添った支援が実を結んだ。


求人情報の探し方もていねいにアドバイスをした。当初、研修生の中には就業時間や職種の希望を狭く設定する人もいた。その結果、ハローワークの求人情報で検索をすると、条件に合う求人がゼロ件になることもあった。

 「がっかりされているのを見て、少しだけ、条件を緩くしてみたらどうでしょう? と提案しました」と深川さん。「とりあえず、どのくらいの求人があるか見るだけ見てみませんか」とゆるやかに持ちかけたのだ。たとえば「週3日、1日3時間で土日休み、家から近い仕事」を探しても見つからなくても「土曜日は保育園を利用できるかもしれないから、働けるかも……」などと考えて条件を緩めると、求人が見つかることもあった。

■ 少しずつ生まれる「できるかもしれない」の気持ち

 深川さんはあきらめず、コミュニケーションを続けた。「どんな仕事か、求人の中身だけでも、見てみませんか?」「もし、この会社で働くとしたら、何がネックになりますか?」といったように、不安の理由を具体的に一緒に考えていった。

 もし、パソコンスキルが足りないことが不安なら、今受けている研修で身に付ければよい。もし、勤務日数が多すぎるのが理由なら、まずインクルームに通う頻度を増やして慣らせばいいかもしれない。

 元気で自己肯定感の高い人なら、自分の心の中で自動的に処理するやり取りをサポートすることで、少しずつ「できるかもしれない」という気分が生まれてきた。これは、ジェンダー専門家が「エンパワーメント」と呼ぶ支援のあり方だ。

 就業継続の支援も丁寧に行った。就職が決まった後、入社する際、不安を訴えていた人には「ちょっとしたエクセルやワードの使い方なら、いつでも質問してください」と伝えた。勤務先の秘密に触れない範囲で就業後もサポートを続けた。

 もうひとつ、大事なことがある。対象となったのは、シングルマザーの中でも、すぐに就職をして働くのが難しい人たちだったということ。インクルいわて理事長の山屋さんは「たとえば、東日本震災によって夫と死別した方などは、ショックが大きく、喪失感を癒すのに時間がかかります。すぐに求職活動ができなくても、当たり前です。また就職した後、働き続けていくことが大事なので、そのために問題を解決したり続けていける力をつけていくことが先です」と言う。

 また、震災前まで働いていても、震災の影響で収入が減ったり、震災を理由に雇止めにあったりした女性も少なくなかった。

 こういう女性たちに、ハローワークで職を探してください……というのは酷であるだけでなく、現実的ではない。やはり、まずは心の回復や生活面での安心確保が不可欠だ。



インクルいわての活動を、設立当初から財政面などから支援してきた国際協力NGOオックスファム・ジャパンでプログラム・オフィサーを務める高橋聖子さんは言う。

 「インクルいわての行った『包括的就労支援』インクルームが特に優れているのは、『生きていくこと全般』をサポートしたことだと思います。人が困難な状況に陥ると、心身、家族関係、経済的な課題が絡み合い、その方が本来持っている力を出しにくくなってしまいます。絡まりあった課題を解きほぐし、経験豊かなスタッフが寄り添うことで、その方が持つ力を発揮できるようになり、やがては、就職にもつながっていったと思います」

■ 「費用対効果」は非常に高い

 キーワードは「生活支援」だ。インクルームは「パーソナル・サポート」と呼ばれるサービスを提供し、子育てや家庭内の悩みを聞き取り、必要な折は支援につなげていった。生活上の不安を出来る限り減らしていくことで、働くことへの意欲が湧いてくる。

筆者の手元には、深川さんが執筆した「インクルいわて 中間的就労支援モデル 包括的就労支援事業 報告書」がある。岩手大学の大学院で経済学を専攻し、男女共同参画について学んだ深川さんの力作で、岩手県内の母子世帯の現状や被災後の状況がデータでわかりやすくまとまっている。インクルームの事業紹介に加え、目をひくのは、この事業の費用対効果に関する分析だ。 報告書24~25ページによれば、就労支援事業の総経費は478万1000円。研修生1人当たりに直すと、1カ月11万9000円となる。半年で約71万円、1年間に約142万円だ。一方、同じ地域で35歳と子ども2人のひとり親家庭が生活保護を受けると月額約18万円になるという。平均的な生活保護受給期間7.7年と比べると、1世帯あたり1600万円に上る。

 インクルームの事業費用は決して安価ではない。けれど、参加した研修生は数カ月の間に心身状態が回復し、大きく前に進むことができた。最終的に6人中3人が就職でき、ほかの3人も就職活動を続けたり、簿記の資格を取得したりと、社会に出ていくことが困難な状況だった全員が社会参加できるようになった。

 「仮に半年から1年程度の期間で就職されることになれば、生活保護費の節減だけでなく、ご本人とご家族の尊厳、社会への人材面の貢献の点においても、費用対効果は非常に高いと考えられる」という指摘には説得力がある。

 インクルームの成功を踏まえ、山屋さんは、こんな目標を掲げる。それは「被災地をシングルマザー包括的就労支援のモデル特区にしたい」ということだ。

 「予算は半年で1000万円、1年間で2000万円もあれば足りるでしょう。被災地復興にもつながりますし、被災地で成功すれば、日本全体にとって励みになるはず。岩手県の女性は全国平均と比べて進学率が半分に留まります。政府が掲げる“すべての女性が輝く”社会実現のために、ぜひ、私たちにシングルマザー特区をやらせてほしい。そこから、本当の復興が生まれると思います」。
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