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牛丼業界、値下げ競争で疲弊~「すき家」のゼンショー、なぜ食品スーパー積極買収に活路?

 牛丼チェーン最大手の「すき家」を運営するゼンショーホールディングス(HD)が、スーパーの買収に積極的だ。昨年11月1日、栃木県足利市を中心にヤマグチスーパーを展開する山口本店(足利市)を買収した。食品スーパー8店舗を経営し、2013年2月期の売上高は46億円。買収価格は3億6500万円。昨年10月にマルエイ(千葉県市原市)を傘下に収めており、これで食品スーパーの買収は3社目となった。

【詳細画像または図表】

 最初のM&A(合併・買収)は12年11月、首都圏が地盤の東証2部上場のマルヤ(埼玉県春日部市)にTOB(株式公開買い付け)を実施した。買収価格は35億円。ゼンショーHDが発行済み株式の78.6%を保有して連結子会社に組み入れた。13年3月期(決算期変更)の売上高は237億円、最終損益は25億円の赤字で7期連続の赤字であり、店舗数は45店ある。そのマルヤが今回、山口本店を買収するかたちになった。ゼンショー傘下の食品スーパーの店舗数は60店舗に拡大した。

●価格競争で苦境の牛丼各社

 牛丼業界は、ますます利益を出すのが難しくなってきている。吉野家ホールディングス(HD)が運営する「吉野家」が昨年4月に、牛丼並盛の定価を380円から280円へと100円値下げしたことで価格競争が激化したためだ。

 ゼンショーHDの13年4~9月期の本業の儲けを示す営業利益は、前年同期比51%減の43億円、最終利益は87%減の4億円と大幅な減益決算となった。売上高はマルヤの買収で同10%増の2276億円と増収となったが、牛丼事業が振るわなかった。すき家となか卯を合計した同事業は1%減の901億円。主力のすき家の既存店の売上高は昨年10月まで26カ月連続で前年を下回った。4~9月期は客数が7%減り、売上高は8%落ちた。新規出店した分でも補えず、部門全体で減収になった。

 円安に加え、中国での需要増で輸入牛肉の調達コストが高止まりし、売上高原価率が3ポイント強上昇したことや、12年に買収したマルヤの赤字も業績の足を引っ張り、減益要因となった。

 そのため、14年3月期の通期見通しを下方修正した。売上高は期初見通しより195億円少ない4544億円(前年同期比9%増)、営業利益は105億円少ない83億円(同43%減)、純利益は56億円少ない5億円(同89%減)。一転して減益となる見通しだ。14年3月期(13年度通期)に150店の新規出店を計画していたが、上期の出店は55店にとどまり、通期でも110店を下回りそうだ。

 値下げを仕掛けた吉野家も同じ。吉野家HDの昨年3~8月期の営業利益は同52%減の7億円と大幅減益となった。吉野家の既存店は、値下げ後の3カ月は客数、売上高とも大きく伸びたが、値下げ効果は長続きしなかった。3~8月期は客数が13%増、売り上げは7%増にとどまった。下期に入ってからは、11月は客数が9%増、売り上げは1%増と値下げの効果は薄れた。

 当初、値下げ効果で客数が3割増え、売上高は2割伸びると想定していたが、「期待したほど客数は伸びなかった」(河村泰貴・吉野家HD社長)と落胆を隠せない。

 松屋を運営する松屋フーズの緑川源治社長は、「並盛なら340~350円が適正価格。もう余力はない」と新規出店を抑制した理由を語る。松屋も昨年10月まで19カ月連続で既存店はマイナス成長だ。

 つまり、こうした苦境の牛丼事業の落ち込みをカバーするために、ゼンショーは食品スーパー事業に力を入れているのかといえば、実はその狙いは違うところにあるようだ。

●ゼンショー、狙いは「フード業のユニクロ」

「フード業世界一を目指す」と公言するゼンショーHDの小川賢太郎会長兼社長の目標は大きい。「世界中に食のインフラをつくることが使命」として、原材料の調達から製造・物流・小売りまで一貫したサプライチェーン(供給網)構築に力を入れる。

 北海道・十勝の直営牧場で1000頭の牛を飼育し、一部農産物の実験栽培も始めた。食材は現時点では外部仕入れが大半だが、今後は自社工場で加工した食材の比率を高める。すでに物流センターから、経営する牛丼、ファミリーレストラン、回転ずしの各チェーンや、野菜の直売店に供給しているものもある。

 食品スーパーを買収する狙いは、肉や魚、野菜の販路を広げるためだ。買収したマルヤでは自社牧場で育てた牛肉をステーキや焼き肉用として販売をスタートさせた。原材料の調達から製造・加工・物流・店舗でのサービスの提供まで一貫して行う総合フード企業への脱皮を掲げるゼンショーにとって、牛丼は販路のひとつにすぎない。こうした観点から、主婦にとって外食より利用頻度が高いスーパーを新たな販路に加えたわけだ。

 高齢化が進む中、インターネットの普及で宅配サービスが広がってきた。その一方で、店頭で商品を購入する回数は減る傾向にある。中堅、中小の食品スーパーにとって後継者がいないのも深刻な問題だ。

 ゼンショーは、これからも食品スーパーの買収を積極的に進めていく。同社は外食業界では不可能といわれた売上高1兆円を視野に入れる。この数字は現在の年商の2倍以上になるが、同社は製造から小売りまで一貫して行うことから、業界内では「フード業のユニクロを目指している」ともいわれている。

 ゼンショーの「フード業世界一」への挑戦から、今後も目が離せない。
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