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「落ち着け」では解消しない! 日本人選手に決定力がない本当の理由

■Jリーグでも日本人選手の得点は少ない

「決定力不足」。

 もはや日本サッカーに未来永劫つきまとうであろう言葉であり、現代における生活習慣病のように、サッカーというスポーツが存在する限り一生付き合っていかねばならない問題だろう。

 ビッグチャンスを決めきれずに終盤までもつれ込み、相手のカウンター一発で勝ち星を逃す。そんな場面は、国内外を問わず、多くのサッカーシーンで目撃することができる。

「日本人には決定力がない」と言われて久しい。Jリーグの歴代得点王を眺めると、昨季と今季は日本人が奮闘しているものの、そこにはケネディ、マルキーニョス、ジュニーニョ、ワシントン、マグノ・アウベス、アラウージョ、等々、外国人選手の名前がずらりと並ぶ。

 ベスト5にすら日本人が入れないシーズンもあり、12年の佐藤寿人、09年、10年に前田遼一が連続受賞してからは02年の高原直泰まで遡らなければならない。欧州に目を向けても、主要リーグの日本人最多得点記録を持つのは中盤の選手である香川真司だ。FWとして2桁ゴールを記録したのは高原直泰、ハーフナー・マイクの2名のみ。

 近代サッカーの発展によって求められる役割が変化しているとはいえ、やはりFWの得点が少ないというのは「決定力不足」に直結していると言わざるを得ない。では、日本人に決定力がない具体的な理由は何なのか? 他の決定力ある選手たちとの違いはどこにあるのか?

 その原因を突き止めるため、私は日本人と世界の選手との比較を行った。

■メッシとクリロナのシュートも3パターンに分けられる

「決定力」を有する選手として、やはり名前をあげなければならないのは、アルゼンチン代表FWリオネル・メッシとポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドだろう。

 ここ数年、世界最高の選手との呼び声をほしいままにしているこの二人は、本稿執筆時点で前者がリーグ戦31試合出場46ゴール、後者が33試合出場34ゴールと、圧倒的な数字を残している。ちなみに、リーガ・エスパニョーラ得点数ワースト1位のオサスナはチーム総得点が28である。

 彼らの華麗なゴールシーンの数々を見る中で、私はあることに気付く。それは、ゴールとなるシュートにはいくつかパターンがあること。私はこれを大きく3つに分けることができると判断した。

[1]GKの予測を上回り、物理的にセーブ不可能なコースへのシュート。

[2]GKの予測すら不可能にするシュート。

[3]予測も物理的対処も可能だが、反射的にセーブすることが困難なコースへのシュート。

[1]はGKが反応するものの、手は届かないというもの。例えば、ゴールマウスぎりぎりのミドルシュートや、鋭利なカーブを描いた直接フリーキックなどが該当する。

[2]はGKの予測を妨害し、反応することすら許さない、あるいは困難にさせるシュート。DFの股を抜きGKの視覚外から放たれたシュートや、高速クロスでGKを揺さぶりダイレクトで押し込むシュート、キックフェイントでGKを抜き去ってから放つシュートなどである。

 そして[3]。これがもっとも注目した点だ。別段、球速があるわけでもなく、タイミングをずらした形跡もない。それでもあっさりとゴールに収まるシュートがいくつも存在した。

 具体的には、GKの顔の横(肩口)、股の間、倒れ込んだ際の脇の下、サイドに追い込まれてから頭上を抜けてネットに収まるという、一部では「ニア・ハイ」と呼ばれるシュートである。

 普通に考えればGKの守備範囲内であり、人体構造的にも何の苦もなく手は届く。そもそも足を閉じれば股下の隙間など空くはずもない。それでもメッシ、ロナウドのシュートは、それらのコースをあっさりとすり抜ける。

■日本人はゴールが決まるコースを知らない?

 なぜGKは[3]のコースへの対処ができないのか? それは人体の構造や反射といったところに原因があるように思う。生物学的な分野になってしまうため、今回はその原因への言及は避ける。だが確かに[3]のコースは存在する。私は「決定力」の鍵がこの点にあると確信した。

 そこで彼らのシュートと今季のJ1、J2のゴールを100本ずつ確認し、主観ではあるが、上記の[1][2][3]に分類して統計を取った。すると非常に興味深い結果が出た。

 まず[1]だが、これは3者とも概ね変わらない。GKの対応が不可能なコースへのシュートはもっとも確実にゴールが決まるものであり、メッシが68%、ロナウドとJリーグが70%と、得点となるシュートは高確率でこのパターンが当てはまる。

 問題は[2]と[3]だ。メッシ、ロナウドは共に[2]が12%にとどまり、[3]がそれぞれ20%、19%に及んでいる。それに対しJリーグは[2]が22%と高く、[3]は8%止まりだ。

 この結果から、私はある仮説を立てた。「日本人は、GKの守備範囲内にも関わらずゴールが決まるコースがあることを知らない」、あるいは「コースの存在を知りながらも、選択肢に含めていない」ということである。

 この仮説を実証するため、私はある実験を行った。地元の少年チームに協力を依頼し、GKとの1対1でシュート練習を行う。シチュエーションのイメージは、DFラインを完全に抜け出してスルーパスを受け、GKとの1対1を迎えたという場面だ。

 ただし、より実戦に近い状況を再現するために、筆者がDFとして背後から全力でプレスバックをする(第一線を退いて久しい体で30m弱の全力スプリントを繰り返した末路は言うまでもない)。これをシューターとGK3人ずつに、それぞれ20本ずつ行ってもらう。彼らはいずれも狙ったところに蹴る技術、GKとしてある程度の水準を満たした技術を備えている選手たちだ。

■シュートコースへの助言を行った結果…

 まず、最初の10本は何の助言も与えずに行う。実戦で言えばビッグチャンスであり、絶対に決めなければならない場面なのだが、年も体格も一回り以上違う大人がプレッシャーをかけていることもあるためか、ゴールに決まる確率が何とも低い。

 10本中3本成功が2人、4本が1人だった。次に、[3]のシュートコースがあることを提示して再び10本行う。すると、3本しか決められなかった2人は、その成功数を8本まで上げた。

 ここまでは目測通りと、私は腹の中でほくそ笑んでいたのだが、くせ者が最後の1人だった。最初の10本では4本を決めていた選手は、アドバイス後でもなんと3本しか決められず、逆にゴール数を落としてしまった。

 これは完全に私の予想外のデータだ。私の仮説は、翻せば「[3]のコースを知ることで決定力が上がる」ということになる。彼の残した数字はその真逆のものだ。だが、数字だけでは語れないのがサッカーである。この検証結果は私の仮説を否定するものにはならなかった。

 実は8本決めた2人のシュートも、実際に[3]のコースへ決めたのは2本だけなのだ。これはゴール数を統計したメッシ、ロナウドの数字とも概ね合致する。最初の1本を股下に決め、そこにもシュートコースがあることをGKに示す。

 するとGKは自分の守備範囲の内側にも関わらずゴールになったことで警戒心を増し、意識がより自分の体の近くへと傾く。それを見たシューターはさらに大きく空いた[1]のコースへシュートを放つのだ。

 それに対し、アドバイス後も3本しか決められなかった選手は最初の2本を股下に決めたものの、3本目でGKにセーブされた後もひたすら同じコースを狙い続け、シュートを打ってはGKに当てるということを繰り返していた。

 私が彼らにかけた言葉は「ここにもコースがある」という助言であり、「ここに打て」という指示ではないということも補足しておこう。

■重要なのは駆け引きで優位に立つこと

 選択肢を多く得た2人は、上手くGKとの駆け引きを制してシュート成功率を上げたのだ。3人目のシュートミスを見る度に頭を抱えたが、単に[3]のコースの存在を知るだけで変化があるという私の考えは、彼のミスによって駆け引きの部分にまで昇華された。

 この現象はメッシ、ロナウドの「決定力」の高さを説明するヒントにもなり得る。彼らはより高い技術を有し、[3]のコースを正確に射抜く技術を持っている。それは彼らにとってあくまで選択肢のひとつでしかないのだが、GKにとっては話が別だ。

 ただでさえ広く大きいゴールマウスを守らなければならない上に、自分の手が届く範囲にまでシュートコースが存在するとなれば、技術的にも精神的にも対処は難しい。狙ったところに寸分の狂いもなく蹴り込む技術に加え、選択肢の多さを用いて巧みに駆け引きを制す。それこそがメッシとロナウドの爆発的な「決定力」の秘密なのだ。

 おそらく、日本人の技術の高さから考えれば、単純に[3]のコースに打つのはそこまで難しいことではない。問題は、[3]の具体的なコースが存在するのを知ること。そして、それを選択肢のひとつに含め、駆け引きを優位に進めることができるかであろう。

 育成年代でよく聞かれる「落ち着け」などという曖昧な指示では、とてもではないが身に付けることは望めない。「決定力不足」解消のヒントは、手の届く範囲にあるのかもしれない。

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