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「おじさん」「僧侶」「文学少女」… “一般人図鑑”はなぜブレイクした?

 2009年に発売された「くらべる図鑑」(小学館)のヒットをきっかけに、出版界では子供向けの“新型図鑑“ブームが続いている(関連記事はこちら)。そんななか、今年になって大人に売れ始めているのが、特定の分野の一般人を集めた“一般人図鑑”だ。

中高年世代から人気に火がついた「おじさん図鑑」

 その代表格が2011年12月7日に発売された書籍「おじさん図鑑」(小学館)。イラストレーターのなかむらるみ氏が街で見かけた普通のおじさんを分類しイラストで図鑑化したもので、3万部売れればヒットといわれるサブカル系書籍でありながら、現在まで累計で11万8000部も発行されている。ほぼ無名の著者の処女作としては異例の数字といえるだろう。

 著者のなかむら氏は、学生のころからおじさんの持つ独特な存在感に興味があり、おじさんをモチーフとして作品を描き続けていた。その奥深い魅力を理解してもらうために書籍化することを思い付き、約5年の歳月をかけて街のおじさんたちを毎日撮影してデータを収集。美大時代の同級生で小学館の図鑑編集者である小林由佳氏の協力を得て、撮りためた約5000枚の写真を図鑑と同じように特徴別に整理・分類した。しかし異色の題材のため、小学館の企画会議を通して出版にこぎつけるまで、3年かかったという。

 編集に際して小林氏は、「高尚でもなく不真面目でもなく、その中間でかつおしゃれな本」であると同時に、「男女・年代の別なく手にとってもらえる本」を目指した。しかしそういう本はターゲットを絞れないので宣伝しにくく、販売部門には厄介がられるという。帯に「すべての若者に捧ぐ」という文言を入れたのは、「中高年向けの本だと思われると若者は手に取らないかもしれない」という不安と、「『若者に向けたおじさん図鑑』であれば逆に中高年も興味を持つのではないか」という計算からだった。狙いは的中し、発売当初は中高年男性からの注文がほかの書籍と比べて2倍ほどあったという。現在は男女ともに、20代から50代以上まで偏りなく売れている。

 「おじさん図鑑」の女性読者の中には、今までは「おじさんが好き」と言うと、「枯れ専?」と聞かれたり「不倫願望がある」と思われたりして、言えなかったという人も多かったという。「この本は、自分と同じ目線。ざっくばらんな気持ちでおじさんを愛する気持ちを共有できたのがうれしい」と感謝されることが多いそうだ。また「うちのお父さんは●ページの座り方なのだが完全に」など、身近な人との共通点を発見してネタとして盛り上がるツイートが多かったのも特徴。「普段からよく見ていなかったら、そうした共通認識は持てない。おじさんは嫌われているように見えて、実は観察され愛されていた、ということを発見した」という。

 同書の取材で小林氏は「おじさんは自由で明快」ということに驚いたそうだ。おじさんはあらゆることに答えがはっきりしているし、興味がないことには徹底して興味がない。そうしたスタンスを見て小林氏は、「小さなことで悩むと損」「この程度のことで悩んでいたら『どうでもいい』とおじさんに言われそう」という考え方になったとのこと。「『1日中、池を見ているだけで楽しい』というように、たとえお金がなくても自由で好き勝手に人生を楽しんでいるおじさんがたくさんいる。若い人に、10代や20代で自殺をするのはもったいなすぎると伝えたい」(小林氏)。

“会いに行けるお坊さん”をカタログ化した「美坊主図鑑」

 40人のイケメン僧侶を集めた「美坊主図鑑」(廣済堂出版)は、2012年2月末に発売。編集担当だった高田順子氏は「長い編集者生活のなかで、50社近くの取材を受け、全てのテレビ局で放映された本はこれが初めて」と驚く。話題性だけではなく売れ行きも好調で、現在までに1万8000部(3刷)発行されている。

 高田氏が僧侶の持つ魅力に目覚めたのは、中学時代の修学旅行がきっかけ。地元・八王子には真言宗智山派大本山の高尾山薬王院があったことから、その後、多くの僧侶と交流を持つようになった。この本の企画は長い間温めていたが、出版に踏み切ったのは震災の影響が大きい。震災後に「不安で気持ちが揺らいでいる」という女性の相談を受けることが多く、そんなときは自身の経験から「お寺に行ってお坊さんの話を聞くといい」と勧めていた。しかし今の若い女性にとって、寺は敷居が高い。そこで「外見がきれいなお坊さんがたくさん載っている本があったら、若い子も興味を持ってくれるし、お寺に行くハードルが下げられる」と考えたという。また震災後、若い僧侶がボランティアで活躍していることを1人でも多くの人に知って欲しかったからだともいう。

 しかし宗教界には厳然としたヒエラルキーがあるため、取材は難航した。年配の僧侶からの反発が特に大きく、「こんなふざけた本に協力はできない」と断られたり、取材先でカメラマンが怒鳴られたりすることもあったという。また「坊主」という言葉に抵抗があり、「美僧侶図鑑」なら協力するという人もいたが、「読む側からすると全く響かない」と、「美坊主図鑑」のタイトルを貫いた。

 ヒットした理由は、「僧侶には禁欲的なのに女心をくすぐる魅力があり、ひそかな女性ファンが多かった」ことだという。いわゆる「制服」シリーズの書籍は多いが、僧侶はそのなかでも特別なポジション。閉ざされた世界であり、宗派を超えて僧侶個人の経歴や趣味などを語る切り口の図鑑はこれまでになかった。「今、お寺はお葬式のとき以外は行かない場所になってしまっている。でも若い僧侶はそういう状況を打破しようと、さまざまな試みをしている。この本でそのことを知ってもらえたら嬉しい」(高田氏)という。

愛読書を語る“心のヌード写真集”「文学少女図鑑」

 2012年7月末に発売されて出足好調なのが、51人の文学少女が自分の愛読書を1人3冊ずつ紹介する「文学少女図鑑」(アストラ)。自費出版されていた小冊子『文学少女 vol.1』の著者が、アストラに出版を打診したのが出版のきっかけだった。自費出版版はどちらかというと“文学少女マニア”の男性向けの写真集だったが、なぜか同社に出入りしている女子大生たちの間で、登場する女性の愛読書をめぐって話が弾んだ。その様子を見て、「読んでいる本の情報を多くして、撮影されている女性の内面にもっと踏み込んだ内容にすれば、より広い層に読まれる本が作れるのでは」と考え、出版を決定したという。好きな本を3冊にした理由は、3冊あればどの系統が好みか分かることと、3冊あれば本音で好きな本が最低1冊は入ると考えたためだ。

 発売からまだ1カ月未満だが、同社が震災直後に出版した原発関連の本(「原発暴走列島」鎌田 慧著)と同じかそれを上回るペースで売れているという。「時事本の勢いに勝つ写真集というのは、当社でも経験がない。このままのペースなら早いうちに増刷となるのでは」(アストラ営業・編集の奥山晶子氏)。

 ヒットした理由はズバリ、「一般女性の内面にダイレクトに迫っていること」。インターネットサービス「美人時計」やフリーペーパー「美少女図鑑」など、一般女性の写真を集めた媒体はこれまでもあったが、登場する女性の内面に深く踏み込んだものは今までなかった。「愛読書を通して自分の内面を語っているわけで、本書内で中森明夫氏が語っているようにいわば“心のヌード”。そこが受けているのだと思う」(奥山氏)。

 もうひとつ、誰もが手にとることのでき、開かれた存在である「本」が媒介となっていることも大きい。男性から見ると近寄りにくい存在の文学少女とも、自分が読んで面白いと思った本があれば、その面白さでつながれる。「●ページに出ている●●さんを紹介して欲しい」という男性のツイートもあったというが、「身近にいそうな一般女性が愛読書について熱く語っているということで、読む人はダイレクトに話しかけられているような錯覚を感じるのかもしれない」(奥山氏)。

 また、プロの書評家は気概やこだわりがあるぶん、勧める本には偏りがある。その点、「文学少女図鑑」に登場する女性たちは一般人なので、取り上げているのは読みやすい本が多く、肩の力が抜けたブックガイドになっている点を評価する声も多い。今の若い女性に受けている書籍の傾向が分かる“嘘のない図鑑”ということで、出版業界の人がマーケティング本としても購入しているという。

 「文学少女図鑑」ウェブサイトでは、公式ブログに紹介する文学少女を募集中だ。

なぜ今“図鑑”だと売れるのか?

 それにしてもなぜ今、図鑑スタイルの本がこれほど売れているのか。

理由(1)細部を拡大し分類することで、発見がある 「図鑑というものは、ひとつのカテゴリーの中で似た特徴を持つものを集めて分類したもの。一見同じように見える植物でも、特徴で分類すると一つひとつ違う個性を持っていることが分かる。それと同じように、グループでは嫌なイメージの強い“おじさん”という存在も、カテゴリー別に特徴で分けたことで個性が浮き彫りになり、愛嬌のある存在であることが伝わったのでは」(小林氏)。「図鑑のように細部を拡大して見せることで、自分たちが普段見慣れているものでも新しい発見がある。一般的な概念が崩される衝撃が魅力なのだと思う」(奥山氏)。

理由(2)データが具体的で細かい 「おじさん図鑑」のイラストは写真をもとに描き起こされているが、図鑑に棲息地を記載するように、目撃地を必ず記載してフィクションではなく実録であることが強調されている。「美坊主図鑑」も、「最終学歴」「お坊さんになった経緯」「趣味」「ステキだと思う女性」など、プライベート面でも細かい質問が設定され、人となりが浮かび上がるようになっている。

理由(3)同じ条件で見て、比較検討できる 「図鑑は、それぞれ異なる特徴を持つものを同一ラインに並べて見せるスタイル。読む側が俯瞰する立場になり、比較しやすくなる。そこに面白さが生まれるのでは」(高田氏)。「美坊主図鑑」の狙いのひとつも、僧侶を比較検討できるというビジュアル。「自分を導いてくれるお寺は宗派や歴史や建物ではなく、お坊さんという“人”で選ぶべき。だから、人を見て比べられる図鑑というスタイルにこだわった」(高田氏)。

 さらに3冊の本に共通しているのが、感想をツイッターでつぶやく人が多いこと。つまり「ネタとして盛り上がれる」要素が大きいということだ。その要因のひとつとして、図鑑というビジュアル中心のスタイルもある。エッセイなどのように文脈読みをする必要がなく、気になる部分から読んでもすぐ理解できる構成のため、書店で立ち読みして感想をすぐツイートすることができる。そのようにして本の魅力が拡散され、ヒットに結びついた面も大きいのではないか。

 もちろん、図鑑スタイルの本なら何でも売れるというわけではない。やはりこれまで見過ごされてきた「一般人」という大きな枠の中で、ファンや愛好者が潜在的にいたジャンルを発掘したことが大きいだろう。

 また、有名人よりも一般人のほうがリアルで面白いという点も大きい。「無名であってもネットで宣伝費をかけずに自分で情報発信していくスタイルが急速に定着している。そのため、有名人の本を宣伝費をかけて売るという従来のヒット本の作り方がもう古くなっている」(高田氏)という見方もある。これからは“一般人“の時代――。そう考えると、これからブレイクしそうな“一般人モノ”はまだまだありそうだ。

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