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再犯の恐れか、差別か アスペルガー症候群被告への求刑超え「懲役20年判決」への賛否 

 広汎性発達障害の一種、アスペルガー症候群の男が起こした殺人事件の裁判員裁判で、「社会に受け皿がなく、再犯の恐れが強い」として、検察側の求刑(懲役16年)を超える懲役20年の実刑判決が下されたことが、議論を呼んでいる。判決は「許される限り長期間、刑務所に収容することが社会秩序の維持に資する」とまで言及した。刑事司法に詳しい有識者や裁判員経験者は「一般国民の感覚に沿った妥当な判決」と評価したが、発達障害者の支援団体などからは「障害への理解が足りない」と批判の声も上がった。(前田武)

■「再犯の恐れ」

 波紋を呼んだ判決は7月30日、大阪地裁で言い渡された。大阪市平野区で昨年7月、姉=当時(46)=を殺害したとして、殺人罪に問われた無職の男(42)に対する裁判員裁判だ。

 河原俊也裁判長は、犯行の背景にアスペルガー症候群の影響があったことを認定。その上で「家族が同居を望んでおらず、障害に対応できる受け皿が社会にない。再犯の恐れが強く心配される」として、検察側の求刑を4年上回る懲役20年を言い渡した。

 この量刑は当然、一般国民から選ばれた裁判員6人と法律のプロである裁判官3人が、評議で十分に話し合って決めたものだ。

 判決は「計画的で執拗(しつよう)かつ残酷な犯行。アスペルガー症候群の影響を量刑上大きく考慮すべきではない」と指摘。男に反省がみられない点も踏まえ、「十分な反省がないまま社会に復帰すれば同様の犯行に及ぶ心配がある」と述べ、殺人罪で有期刑の上限となる懲役20年が相当とした。

 事件の内容や犯行態様、結果の重大性、反省の度合い、更生の見込みなどを検討しており、量刑を導き出す手法として通常のやり方から大きく逸脱したものではない。

■逆恨み募らせ…

 今回の判決で認定された事件の一部始終は理不尽極まりないものだった。

 男は小学5年生のころから不登校になり、それから約30年間ほとんど自宅に引きこもる生活を続けてきた。中学校の転校を望んだこともあったが実現せず、姉のせいだと勝手に思い込んで恨むようになった。

 その後、男は自殺を考えるようになった。インターネットで自殺の方法を調べようと思い立ち、姉にパソコンを買うよう無心。ところが、姉が買い与えたのが中古のパソコンだったことから、さらに恨みを募らせた。

 姉は引きこもり生活を続ける男に生活用品を届けるなどしていたが、昨年7月13日ごろ、「食費などは自分で出しなさい」との書き置きを見た男は、姉の報復だと受け止めて殺害することを決める。

 同7月25日、男は自室を訪れた姉の腹などを包丁で何度も刺し、姉は5日後に死亡した。男は逃げ惑う姉を執拗に刺し続けたという。判決は「姉は男の自立のために精いっぱいの努力をしてきた。身体的にも金銭的にも尽くしてきたのに理不尽に殺害された」と言及している。

 残された夫や子供の悲しみ、怒りは極めて大きく、「一生、刑務所から出られないようにしてほしい」と訴えたという。被害者(遺族)の処罰感情は、量刑を決める上で重要な判断材料の一つになる。

■「妥当な判決だ」

 弁護側は公判で「殺意を抱いたのは障害のためであり、この感情をどうすることもできなかった」として保護観察付き執行猶予を求めた。しかし、判決は「犯行の残虐性や結果の重大性から、執行猶予にする事案ではない。アスペルガー症候群の影響は重視すべきでない」と退けている。

 量刑理由で「再犯の恐れ」や「社会秩序の維持」に強く言及した今回の判決について、元最高検検事の土本武司・筑波大名誉教授(刑事法)は「責任能力に問題がない以上、刑罰を決めるにあたっての最も重要な点は社会秩序の維持だ」と強調。「被害者に落ち度はなく、裁判員の判断は常識にかなっている。裁判員裁判を導入した成果だと言える」と評価する。

 裁判員制度を導入した目的の一つは、一般国民の感覚を裁判に取り入れることだ。裁判員の経験がある大阪府内の男性は「一般的な感覚として妥当な内容だと思う。罪を犯した以上、それに応じた罰を受けるのは当然だ」と判決に共感を示し、「障害があるのは気の毒だが、だからといって周囲に迷惑をかけて良いわけではない」と述べた。

■「偏見を助長する」

 一方、発達障害に詳しい六甲カウンセリング研究所の井上敏明所長(臨床心理学)は「発達障害には家族など周囲の理解が大事で、単に刑務所に長く収容するだけでは解決にならない。発達障害への偏見を助長する時代錯誤の判決だ」と憤る。

 患者や支援者でつくる日本発達障害ネットワークや日本自閉症協会、日本児童青年精神医学会の3団体は判決後、「障害に対する無理解と偏見があり、差別的な判決」などと批判する声明をそれぞれ発表した。

 また、罪に問われた障害者を支援する「共生社会を創る愛の基金」も「矯正の可能性を否定し、『危険な障害者は閉じ込めておけ』と言っていることになる」と批判。発達障害者には、全国で設置が進められている発達障害者支援センターや地域生活定着支援センターで専門的な対応が可能として、「受け皿はある」と訴える。

 発達障害者支援センターは、17年に施行された発達障害者支援法に基づいて全国60カ所以上に設置されている。本人や家族からの相談に応じ、助言や指導を行う。地域生活定着支援センターは21年度から各地で設置が進んでおり、刑務所などを出所した障害者や高齢者の社会復帰を支援。出所前から福祉施設のあっせんなどを行っている。

 ただ、いずれも地域によって支援の内容に差があるという。また、本人が拒否した場合は関与が難しいなど、さまざまな課題があるのも事実だ。

 今回の判決は「検察官の意見(求刑)には相応の重みがあり、それを超える量刑には慎重であるべきだ」と断った上で求刑を上回る量刑を決めている。評議では裁判員と裁判官の間でさまざまな議論が交わされたことがうかがえる。

 誰もが裁判員に選ばれる時代。容易に正否の判断がつかない困難なテーマに直面するのは、次はあなたかもしれない。 
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