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特別な敗戦で示した成長の証=米国女子代表 2−1 日本女子代表

■ 両者が待ち望んだ再戦
 決戦前夜、澤穂希は万感の思いで語った。
「決勝は米国に来てほしいと思っていました。(五輪の決勝という)大舞台で米国と試合ができることに、縁を感じています」

 15歳で日本女子代表にデビューして以来、彼女は常に世界王者・米国の背中を追い続けてきた。一度でも「手が届かないだろう」とあきらめていたら、こんな日はやってこなかった。

 米国代表のエース、ワンバックも言葉をかみ締めた。
「チームが決勝に進んだことを誇りに思う。(先行された準決勝カナダ戦で)わたしは一度として勝利を疑わなかった。決勝での日本との再戦は、ワールドカップ(W杯)で敗れてから、ずっとそれを望んでいた」

 よき友、よきライバルである両者が待ち望んだ再戦である。2012年8月9日、ロンドン五輪の決勝戦、米国女子代表対なでしこジャパンの試合が行われた。ウェンブリー・スタジアムに詰めかけた観客は8万203人。女子サッカーの試合としては、1999年W杯決勝(ロサンゼルス)の9万185人に次ぐ、史上2番目の大観衆だ。選手が入場するとともに、歓声が耳をつんざいた。サッカーの聖地が、世界でたった2カ国だけのファイナリストを迎え入れた。
■ ボックスの復帰が米国を勝利に導く
 なでしこジャパンは、南アフリカ戦を除き今大会5試合目となるベストメンバーで決戦に挑んだ。GK福元美穂。DF近賀ゆかり、岩清水梓、熊谷紗希、鮫島彩。MF阪口夢穂、宮間あや、川澄奈穂美、澤穂希。FW大野忍、大儀見優季。対する米国は、大会初戦のフランス戦で太ももの裏を負傷したMFボックスが、5試合ぶりに戦列に復帰。ボックスとロイドがMF中央を担った。

 結果的に、このボックスの復帰こそが、米国を勝利に導いた。つまり、米国はチェニーとロイドがボランチコンビを組んだ場合、「ロイドには、チェニーを自由にプレーさせる役割を与える」(スンダーゲ監督)として、プレーに制限を加えざるを得なかったのだが、決勝ではより守備的なタイプのボックスが攻守のバランスを取る役目に徹したため、ロイドの本来の強みである「縦に強い攻撃力」がよみがえったのだ。

 前半8分、米国は右サイドで得たスローインから横に展開し、左サイドのヒースが深いエリアに進入する。ヒースからモーガンを経由して逆サイドに上げられたセンタリングに飛び込んだのが、ロイドだ。後にモニターで確認してみると、ボールの行き先で待ち構えていたのはワンバックだった。なでしこの守備陣も、ワンバックに決めさせまいとシュートコースを消しにいった。そこで、モニター画面の外から、ロイドが急にフレームインしてきている。スピードに乗って長い距離を走ってきたロイドの積極性が、早い時間帯での先制点に結びついた。
■ 攻撃重視の布陣もあと一歩及ばず
 以前のなでしこならば、ここから米国の猛攻にさらされ続けるパターンだが、この日は違った。冷静にボールを動かし、相手のすきを探っては積極的にパスを入れる。米国は、ボランチの横(右サイドハーフ、ラピノーの背後)が穴だった。そこに起点を作り、深いエリアに俊足の川澄を突っ込ませると、なでしこに得点チャンスが芽生えた。なでしこは左から崩す攻撃で、17分に大儀見、33分に宮間、38分には大野のシュートなどで決定機を迎えたが、いずれもわずかに精度を欠いた。

 前半のチャンスに決めきれなかったなでしこに対し、命拾いした米国は後半9分に追加点を挙げた。ワンバックの頭からモーガン、ラピノーと小気味よくパスをつなぐと、ロイドのドリブルシュートがゴールに突き刺さった。

 対するなでしこは相手DFの癖をつかみ、攻略の糸口につなげた。今年3度対戦した親善試合でも見られたのだが、米国はセンターバックの1人が前につり出された時、最終ラインに残った3人が距離感を修正できない悪癖を抱えている。その弱点を突くように、大儀見または大野が交互に下がってボールを受け、背後のスペースを味方に使わせていた。その戦術がやっと実ったのが、後半18分だ。大野からのパスを受けた澤がシュート。こぼれ球をもう一度拾った澤からのパスを、フリーで待ち構えた大儀見が決めた。大儀見は決勝トーナメント3試合でいずれも得点を記録。相手が強ければ強いほど、彼女の冷静な判断力が光った。

 後半38分には相手のパスを途中出場の岩渕真奈が奪い、絶好の同点機を迎えたが、シュートはGKソロに阻まれた。1点を追いかけたまま終盤にさしかかると、なでしこは大儀見、岩渕、さらに途中出場の丸山桂里奈を3トップ(1トップ2シャドー)に、川澄をサイドバックに置くという攻撃重視の布陣を敷いたものの、あと一歩及ばなかった。結局、試合は2−1で終了し、米国が3大会連続の金メダリストに輝いた。

■ 「勝てる」と思わせる試合内容
 スポーツには必ず結果がつきまとう。時には「天国と地獄」という表現が当てられるほど、勝者と敗者は明確に、残酷なまでに区別される。だが、この夜は違った。勝者は敗者をねぎらい、敗者は勝者を心からたたえた。なれ合いではない。予定調和でもない。互いに勝つことだけを強く求め、積極的に持ち味を発揮しあったからこそ、両チームは充実した90分間を渡り合った仲間として共感できたに違いない。澤はワンバックのもとに駆け寄った。そして短い言葉を交わし、2人は固く抱擁した。2人とも、この大会が代表選手としての集大成になると公言していただけに、感慨深いフィナーレとなったことだろう。

 なでしこジャパンにしてみれば、W杯、五輪を通じた世界大会での米国戦で、この夜ほど自在に攻撃を繰り出せたことは、過去31年間で一度もなかったといえるだろう。昨年のW杯で優勝を勝ち取った時でさえ、連続するピンチを紙一重で防ぐ時間が圧倒的に多かった。だが、このウェンブリー決戦では互角に渡り合えた。奇跡や幸運に頼らずとも、米国に「勝てる」と思わせる試合内容だった。

 だからこそ、選手たちは勝てなかったことを悔しんでいるだろう。岩渕が、宮間が、丸山が、号泣した。でもそれは、本気で悔しがれる段階にまでチームが成長した証でもある。この日の負けは、記録上、なでしこジャパンが今後もたくさん勝ったり、たくさん負けたりするうちの1つでしかない。でもこれは、「決勝で」「米国に」互角の内容でプレーしたという意味で、特別な負けなのだ。

 また、米国にはパワー頼みから脱却しようとしている様子と、その手応えを感じさせたシーンが、この試合中にあった。得点にはつながらなかったのだが、前半32分、ロイド、ルペルベット、ヒースの3人が、自陣右サイドで華麗にワンタッチパスをつなぎ、大野と澤の連動したプレスをかわして攻撃を展開した。その瞬間、スンダーゲ監督はガッツポーズを作りながらベンチを飛び出し、喜びを表現していた。大きく蹴るだけではない、細かくつないで相手をかわすサッカーは、米国がなでしこから刺激を受けて取り組んでいるスタイルだ。その目指すプレーを決勝で、本家なでしこを相手に披露できたことに、スンダーゲ監督の心が跳ねた瞬間だった。
■ 世界のトップに居続けるための課題
 大会全体を振り返ってみると、なでしこジャパンがロンドン五輪で輝けた大きな要因は、組織的な守備が機能したことにある。特にブラジル戦、フランス戦の勝利は、現在のメンバーの能力を最大限、チームのために注いでプレーした結果である。もちろんそれらの勝利が重要な成功例なのは違いないが、これを日本の女子サッカーの完成形だと思い込むのは、早まった考えかもしれない。

 弱点を補い合うチームワークは何度も訪れたピンチを救う原動力となった。ところが、日本人の強みと言われてきた正確な技術を駆使して自在に攻め込むシーンは、決勝まで、あまり多く見られなかった。

 なぜ、そうなったのか。日本サッカーで「技術」といえば、技術の「精度」のことを指す。ところが今大会で見られた通り、現在の女子サッカーは各国ともに選手のアスリート化が顕著であり、人もボールもよりスピーディーに動くスポーツに進化してきた。つまり、女子サッカーは男子同様、相手から時間を奪いあう勝負に突入してきたのである。

 時間的余裕をもってボールを扱えないとなれば、なでしこは今後、技術の精度だけでなく、技術の速度(より素早い身のこなしでボールを扱う)、技術の強度(より強いボールを蹴って、ボールを早く動かす)を追求すべきではないだろうか。

 興味深いのは、パワーサッカーからフィットネスサッカーへの転換を成功させたドイツ男子代表のフィットネスコーチと、なでしこジャパンの宮間が、それぞれ別々のインタビューで語った言葉が一致していることだ。両者はこう言う。「フィジカルの強さは勝つための決定的な要因にはならない。しかし、フィジカルが弱いことは負ける理由になる」と。日本人が持つ組織力、技術力の優位性をつぶさない程度に、選手個々のフィットネス、動作スキルを高めることは、今後もなでしこジャパンが世界のトップで居続けるために欠かせない課題となるはずだ。

 次なる女子サッカーの世界大会は、2015年、カナダで行われるW杯だ。なでしこジャパンは、前回王者として各国からターゲット視されることだろう。開催国カナダはロンドン五輪で3位と躍進し、自国開催のW杯で世界の頂点を目指す土台を作った。豪快さとしなやかさを兼ね備えたフランスも、今度は決勝トーナメントで勝ち進むことを見越したコンディショニングを研究してくるだろう。ロンドンには参加できなかったが、ドイツも相変わらず欧州の強豪として君臨する。そして、今大会の金メダリストとなった米国の存在。ライバルに不足はない。各国が3年間でどれだけ成長してくるかも、とても楽しみだ。互いによきライバルであり続け、ともに発展していくことこそが、なでしこジャパンを、そして世界の女子サッカーを、未来へと導く力になる。
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